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センター概要

センター長の挨拶

計算材料学センター長 久保 百司
計算材料学センター長 久保 百司

 豊かで暮らしやすい未来社会の創造に加えて、エネルギー問題・環境問題への対応、持続可能な安全・安心社会の構築など人類が直面している課題の解決に向けて、計算科学への期待は益々大きくなってきています。2020年6月発表の世界のスーパーコンピュータの性能ランキングTOP500において、日本のフラッグシップスーパーコンピュータである「富岳」が、世界1位を獲得しました。さらに、「富岳」はHPCG(High Performance Conjugate Gradient)、HPL-AI、Graph500の3部門でも世界1位を獲得しました。このような状況下において、本センターのスーパーコンピュータは、「富岳」を頂点とする日本の計算資源のヒエラルキーの中で、「富岳」に直結する第2階層に位置しており、材料科学の発展に貢献することが強く求められています。本センターでは、このミッションを果たすべく、国際共同利用・共同研究施設としてスーパーコンピュータの計算資源を世界の材料科学コミュニティへ提供するとともに、スーパーコンピュータ用のアプリケーションソフトの開発と材料科学への応用展開を推進しています。さらに、計算物質科学スーパーコンピュータ共用事業として、「富岳」成果創出加速プログラムや計算物質科学人材育成コンソーシアム、元素戦略プロジェクトに参画している研究者への計算資源の提供、計算物質科学人材育成コンソーシアムとの連携、アプリケーションソフトの並列化支援、アプリケーションソフト講習会の開催などの事業も推進しております。また、将来必要となる計算物質科学に関するシミュレーション技術、データ利活用技術についての意見集約と国や関係諸機関への提言を行う活動も行っております。
 2018年8月から本センターではCrayXC50-LCを中心とした新しいスーパーコンピューティングシステム”MASAMUNE-IMR”の稼働をスタートさせました。演算性能も前システムの300TFLOPSから3PFLOPSへと大幅に増強されています。本センターが材料科学の分野で果たすべきミッションを明確にしながら、異分野との融合・協調も進めつつ、独創性のあるセンターとして材料科学分野に資する研究を発展させていければと思っております。今後とも、皆様方からのご支援・ご協力を宜しくお願い申し上げます。

計算材料学スーパーコンピューティングシステム

 多様化する計算材料学の研究ニーズに対応可能な本センターの高性能スーパーコンピューティングシステムは、Cray XC50-LC とアクセラレータを搭載した Cray CS-Storm 500GT を中心に構成されており、総計算ノード理論演算性能は3PFLOPS となる材料設計シミュレーション専用のスーパーコンピューティングシステムです。
 このシステムでは、理論的な材料設計シミュレーションに必要な各種ソフトウェアを本スーパーコンピューティングシステム専用にチューニングし、国内外の材料研究分野の研究者に提供しています。

計算材料学センターの役割

 計算材料学センターは、1994年の初代スーパーコンピューティングシステム導入以降、幾度かのシステム更新を行いながら金属材料研究所の共同利用施設として計算材料学分野を中心に利用されてきました。2009年には全国共同利用・共同研究施設の体制を確立し、材料科学分野の全国共同利用・共同研究拠点として、材料研究への計算資源の提供を通し、数々の研究成果の輩出に貢献してきました。2018年には全国共同利用・共同研究施設から国際共同利用・共同研究施設に移行し、国際的にも計算材料学研究の発展と分野振興を推進しています。
 さらに、2018年のシステム更新によって、これまでの計算材料学研究における物理現象の予測や物質設計への応用といった要請に加え、GPUによる超並列計算やマルチスケールシミュレーション、インフォマティクスなど多様化する新しい研究ニーズに応える計算資源の提供が可能となりました。これにより、世界的に早急な対応が求められているエネルギー問題・環境問題を解決する材料技術の創製、豊かで暮らしやすい未来社会を創造するとともに我が国の国際競争力を強化するデバイス・エレクトロニクス材料の開発、さらには持続可能な安全・安心社会を実現するための社会基盤を支える新材料の創出に寄与することを目的としています。また、スーパーコンピュータを最大限に活用した新材料・新物質に関する最新の研究成果を配信していくことで計算材料学分野の発展に貢献します。
 また、計算物質科学スーパーコンピュータ共用事業として、「富岳」成果創出加速プログラムや計算物質科学人材育成コンソーシアム、元素戦略プロジェクトに参画している研究者への計算資源の提供、計算物質科学人材育成コンソーシアムとの連携、アプリケーションソフトの並列化支援、アプリケーションソフト講習会の開催などを通じて、日本における計算物質科学の分野振興事業に対して積極的な支援活動を実施しています。  

システム概要

システム構成

東北大学・金属材料研究所・計算材料学センターのスーパーコンピューティングシステムは、日立製作所が導入したスーパーコンピュータ(Cray XC50-LCおよびCray CS-Storm 500GT)、 並列計算・インフォマティクスサーバ(HPE ProLiant DL360 Gen 10)から構成されます。下記にシステム構成図およびシステムの性能を示します。

SYSTEM-OVERVIEW
システム名 スーパーコンピュータ 並列計算・インフォマティクスサーバ
機種名 Cray XC50-LC Cray CS-Storm 500GT HPE ProLiant DL360 Gen10
外観
XC50-LC
CS-Storm 500GT
HPE ProLiant DL360 Gen10
サーバ台数 計算ノード 293台
I/Oノード等 27台
29台 29台
CPU

Intel Xeon Gold 6150

  1. 周波数   :2.7 GHz
  2. CPUコア数:18 Core
  3. 搭載数   :2基/サーバ

Intel Xeon Gold 6150

  1. 周波数   :2.7 GHz
  2. CPUコア数:18 Core
  3. 搭載数   :2基/サーバ

Intel Xeon Gold 6154

  1. 周波数   :3.0 GHz
  2. CPUコア数:18 Core
  3. 搭載数   :2基/サーバ
アクセラレータ -

NVIDIA Tesla V100 for PCIe

  1. 演算性能 :7.0 TFLOPS
  2. GPUコア数 :5,120 Core
  3. 搭載数  :10基/サーバ
-
主記憶容量 768 GiB/サーバ 768 GiB/サーバ 576 GiB/サーバ
システム総演算性能 3.03 PFLOPS
(CPU性能: 1.00 PFLOPS, GPU性能: 2.03 PFLOPS)
100.22 TFLOPS
システム総CPUコア数 11,592 Core 1,044 Core
システム総GPUコア数 1,484,800 Core (290基) -
システム総主記憶容量 241.6 TiB 16.3 TiB

スーパーコンピューティングシステムの愛称

愛称: MASAMUNE-IMR
MAterials science Supercomputing system for Advanced MUlti-scale simulations towards NExt-generation - Institute for Materials Research

MASAMUNE-IMR

 仙台開府の父であるとともに、帆船サン・ファン・バウティスタ号によって仙台から世界を目指した伊達政宗公にちなみ、東北大学金属材料研究所のスーパーコンピュータで得られた材料科学に関わるマルチスケールシミュレーションの研究成果を、次世代に向けて仙台から世界へ広くアピールできるようにと、東北大学金属材料研究所のスーパーコンピューティングシステムの愛称を、”MASAMUNE - IMR” と致しました。
 スーパーコンピュータの筐体パネルには、愛称の文字と墨絵師の御歌頭氏が描いた仙台の地から次世代の材料科学の世界を見据える政宗公のイメージがデザインされています。

※ この愛称は一般公募され、応募総数486通の中から青森県十和田市の会社員の方の作品を採用させて頂きました。
※ スーパーコンピュータの筐体パネルのデザイン画は、MASAMUNE-IMRという愛称をもとに、墨絵師の御歌頭氏に依頼し作成して頂きました。

研究成果紹介

ダイヤモンドライクカーボンの摩耗メカニズムの解明とそれに基づく高耐久性ダイヤモンドライクカーボンの設計指針の提案

ダイヤモンドライクカーボンはダイヤモンドに似た構造を有する超低摩擦材料であり、宇宙ステーションや航空機エンジン等の機械システムへの応用が期待されています。しかし、ダイヤモンドライクカーボンの「摩耗」は、材料の寿命の低下のみならず、機械の故障、さらには予期せぬ事故を引き起こします。そのため安全・安心社会の実現に向けて、より摩耗しにくいダイヤモンドライクカーボンの開発が重要課題となっています。
摩耗しにくいダイヤモンドライクカーボンの開発には、摩耗現象を解明することが必須ですが、実験的にナノスケールで摩耗現象を直接観察することは困難です。そのため、計算科学シミュレーションを活用し、ダイヤモンドライクカーボンの摩耗メカニズムを理解した上で、「摩耗を減らす」ための設計指針を明らかにすることが求められています。しかし、摩耗現象は「化学反応」に加えて「摩擦、衝撃、応力、流体、伝熱」などが複雑に絡み合ったマルチフィジックス現象であるため、これまで摩耗現象の理論的な解明は全く行われてきませんでした。
そこで、スーパーコンピュータ「MASAMUNE-IMR」上で、化学反応を含む複雑なマルチフィジックス現象を解明可能な分子動力学シミュレータを開発することで、ダイヤモンドライクカーボンの摩耗を誘発する原因となるトライボエミッション現象のメカニズムを世界で初めて明らかにしました。その結果、トライボエミッション現象は、機械システムの故障や事故に大きく関わっていることを提言しました。さらに、ダイヤモンドライクカーボンの成分や周囲の環境を制御することで摩耗を減らすことが可能であることも示し、高耐久性ダイヤモンドライクカーボンの設計指針を明らかにしました。これは機械システムの長寿命化に加え、故障・事故の防止に貢献しうる成果です。

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図. ダイヤモンドライクカーボンの摩擦シミュレーション
―摩擦界面からメタン、エタン、エチレンなどの気体分子が蒸発するトライボエミッション現象により「摩耗」が誘発されることを明らかにしました。

Yang Wang, Naohiro Yamada, Jingxiang Xu, Jing Zhang, Qian Chen, Yusuke Ootani, Yuji Higuchi, Nobuki Ozawa, Maria-Isabel De Barros Bouchet, Jean Michel Martin, Shigeyuki Mori, Koshi Adachi, and Momoji Kubo
Sci. Adv., 5[11] (2019) Art.No.eaax9301. DOI:10.1126/sciadv.aax9301

Li2B12H12システムにおける陰イオンの回転再配向運動とLi+イオン伝導:分子動力学的研究

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図1左側は低イオン伝導性(α相)、右側は高イオン伝導性(β相)のLi2B12H12結晶構造。β相には、多数の占有率が0.5の侵入型サイトが見える。下のパネルは、Li+イオン密度をプロットしたもので、高イオン伝導であるβ相にはLiイオンの伝導経路が見える。

リチウム電池などの充電可能な電池は、地球温暖化に対する最も有効な技術であると同時に我々の日々の生活を豊かにするものと考えられています。その一層の性能向上には全固体電池の開発に期待がかけられています。全固体電池は、可燃性の有機電解質溶液の代わりに固体電解質を用いるものであり、高い安定性と高い容量密度という特徴があります。
一般的には固体電解質のイオン伝導度は低いですが、いくつかの可能性ある物質群があります。これらの中で、大きな陰イオンB12H122-とLiイオンとの電解質であるLi2B12H12が新たなイオン伝導体として最近注目を集めています。他のイオン伝導体と異なり、B12H122-の回転再配向が重要な役割をしていると予想されており、我々はその伝導機構を分子動力学シミュレーションにより解明しました。まず、正確なイオン間の力場パラメータを開発し、長時間のシミュレーションを必要とする再配向のシミュレーションを可能にしました。このポテンシャルモデルでは、低伝導性の低温相と高伝導性の高温相の間の転移を再現することが可能であることを確認しました。高伝導相では、陰イオンの回転再配向により、図1に示したようにLi +イオン拡散に関与する多くのLiサイトが生成されることがわかりました。このポテンシャルモデルは、似たような陰イオン構造であるクロソ型の水素化ホウ素を含む種々の材料に適用可能であり、置換効果などを予測することで有望なイオン伝導体の開発に寄与すると期待されています。また、現状では100℃以上でないと動作しませんが、その高伝導相を室温近くで安定化させる方策を見出すことも期待できます。このように、実用化に向けて、大きく進展しています。

Kartik Sau, Tamio Ikeshoji, Sangryun Kim, Shigeyuki Takagi, Kazuto Akagi, and Shin-ichi Orimo
Phys. Rev. Mater., 3[7] (2019) Art.No.075402, DOI:https://doi.org/10.1103/PhysRevMaterials.3.075402

L結晶構造制御を実現するアントラセンの位置選択的メトキシ化

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有機化合物の分子構造の情報のみから、その結晶構造を予測・制御することはこれまで非常に困難であるとされています。これは安定化エネルギーが小さくまた競合する多くの分子間相互作用が予測できないためであり、分子集合体での配列が重要となる有機材料化学の分野では、人為的な結晶構造制御の手法が待望されています。本研究では、有機半導体の重要な構成分子として知られているアントラセンに対し、位置選択的に二つのメトキシ基を導入した5種類の誘導体を合成し、その結晶構造に関して実験と理論の両面から系統的な研究を行いました。
単結晶X線構造解析の結果、ジメトキシアントラセンの結晶構造はメトキシ基の位置に応じて「傾斜型積層構造」と「ヘリンボーン型結晶構造」の2種類に分類できることが分かりました。これらの結晶構造をもとに置換位置の分子間相互作用に対する影響を理論的に解析しました。図は1,5-および2,6-ジメトキシアントラセンに対して、noncovalent intermolecular interaction(NCI)法(図aおよびb)およびHirshfeld surface分析(cおよびd)を用いて、分子間相互作用と分子間接触を可視化したものです。母体となる無置換のアントラセンは2,6-ジメトキシアントラセンと同様のヘリンボーン型構造であるのに対し、分子短軸方向にメトキシ基を導入した1,5-誘導体では傾斜型積層構造となっています。ここで、1,5位のメトキシ基は隣接する分子のπ平面と引力的な相互作用を引き起こしつつ、無置換体や2,6-誘導体で大きく安定化に寄与している分子間相互作用であるアントラセン部の水素原子と隣接分子のπ平面との接触を妨害しています。これを定量化するために、Psi4プログラムを用いたsymmetry-adapted perturbation theory(SAPT)法により解析したところ、分子間での分散力(図aとbの数値、単位 kcal / mol)が主要な引力的な相互作用の要因であり、メトキシ基によって引き起こされる分子間での局所的な安定化が結晶構造を決定していることが示唆されました。

K Takimiya, T. Ogaki, C. Wang, and K. Kawabata
Chem. Asian J., 15[6] (2020) pp.915-919, DOI:https://doi.org/10.1002/asia.201901756

FCCハイエントロピー合金FeCrNiCoAl0.36 におけるナノ変形双晶過程のシミュレーション

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本研究は、FCC構造を有する FeNiCoCrAl0.36 ハイエントロピー合金中の変形下におけるミクロ組織の発展を、第一原理計算によって求められた一般化積層欠陥をベースにしたキネティックモンテカルロ法により解析したものである。その結果として、ナノ双晶の形成経路が2つあることや、ナノ双晶以外にもナノレベルの厚さを有するHCP層が変形途中に多数形成されること、さらにはナノ双晶がHCP層の中で発生しやすいことなどが明らかになった。また実験観察との比較により、キネティックモンテカルロ法で得られたミクロ組織は、実験と良く一致することが示された。本研究で得られた知見や成果は、変形下でハイエントロピー合金中に形成されるミクロ組織の形成メカニズムを明らかにするだけでなく、ナノ組織形成を制御するための制御指針を提示することを通じて、さらに優れた機械的特性を有するハイエントロピー合金の開発に寄与するものである。

P. Yu, R. Feng, J. Du, S. Shinzato, J. Chou, B. Chen, Y. Lo, P. Liaw, S. Ogata*, and A. Hu*
Acta Mater., 181 (2019) pp.491-500, DOI:https://doi.org/10.1016/j.actamat.2019.10.012

アクセス

JRを利用した場合

仙台駅より徒歩
仙台駅西口より 徒歩 約20分
仙台駅よりタクシー利用
仙台駅1階西口タクシー乗り場より 乗車 約10分
仙台駅より地下鉄利用
【 仙台市地下鉄 東西線 】「青葉通一番町」駅南1出口より 徒歩 約10分
仙台駅より仙台市営バス利用
仙台駅 西口バスプール「11」番より「霊屋橋(おたまやばし)」経由の以下いずれかに乗車
  1. [701系統]八木山動物公園駅 行き
  2. [704系統]八木山動物公園駅・緑ヶ丘三丁目 行き
  3. [706系統]八木山動物公園駅・八木山南・西高校 行き
乗車時間10分 「東北大正門前」で下車し 徒歩 約5分

飛行機を利用した場合

仙台空港より
仙台空港から仙台空港アクセス線に乗車(25分)、仙台駅下車 ※ 仙台駅下車後は、JRを利用した場合を参照下さい
MAP-CCMS
〒980-8577
宮城県仙台市青葉区片平2-1-1
東北大学金属材料研究所 計算材料学センター
Tel: 022-215-2411 Fax: 022-215-2166