本センター責任部門体制発足

計算材料学センター長

川添良幸

 本所では,新素材設計開発施設において,平成11年9月より,井上所長の研究室が責任部門となっている。その趣旨は,「施設独自の研究を強力に推進するためには,いままで3研究部で行われていた施設の研究を統括して,それらの研究能力を結集する必要があります。そこで,新素材開発研究の分野で実績のある教授研究部門を責任部門(施設担当部門)として,その教授の指導のもとで施設独自の研究を行う体制をとることにしました。」とある。

 今年度より,本センターにおいても,上記新素材設計開発施設の例に従い,センター運用体制の高度化と安定化を図るため,単に川添がセンター長をしているというレベルを超え,川添研究室を責任部門とすることが,教授会で承認された。従来から,スーパーコンピュータ導入時及び更新時の機種選定作業や,毎週のICOMミーティング(12年間継続的に行っている技官とセンター長の打ち合わせ会),月に一度の納入メーカーとの定例会,等では川添研究室は本センターの運営に主体的に関わって来ていた。また,センター所属の技官の支援スキルの向上を目指し,川添研究室では,国内外学会・研修等への参加や,計算機関連の講習会への出席・論文発表を支援・指導していた。機材に関しても,常に新しい装置が入り,最新の技術を体得できるように,川添研究室が関与しているプロジェクト研究から供出するように努めている。今年5月に仙台で開催したIPMM(Intelligent Processing and Manufacturing of Materials)「材料の知的製造と加工に関する国際会議」は,カナダ国バンクーバー市ブリティッシュコロンビア大学のミーチ教授と川添が共同主催し,それを本センターが後援して,金属ガラスに関する井上所長の基調講演や飯島教授のナノチューブ発見秘話等と熱心な討論で,17ヶ国から訪問された材料研究者に高い評価をいただくことができた。特に本センターのスーパーコンピュータを活用した分子エレクトロニクス用デバイスの電気伝導特性や水素をガスボンベ並みに吸蔵する水クラスレートに関する大規模シミュレーション計算結果は注目を集めた。

 今後,新素材設計開発施設の例を見習い,川添研究室が関係している各種プロジェクト研究から,本センターに最適なものを選定し,本センターの業績となるように設定する予定である。特に,本センターのスーパーコンピュータの能力を最大限に発揮させることのできる全電子混合基底第一原理シミュレーション計算法(TOMBO=TOhoku university Mixed-Basis Orbitals method)は,カタログ性能の70%もの実行効率を達成し,全体の平均をも30%程度まで上げている(他センターでは装置の稼働率のみを発表しており,その実行効率が10−20%であることは一般に知られていない。初期のリンパックテストの結果と実際の実行効率は全く違っている)。既に,さらなる超大規模計算環境を構築するため,川添が部会長をしているスーパーSINETナノテクノロジー研究部会及びスーパーコンピュータ連携実験を目的とした第4班班長をしている学術創製プログラムの実行部隊として,一関技官を中心に,本所と東京大学物性研究所,岡崎国立共同研究機構分子科学研究所,及び九州大学情報基盤センター間の分散処理用超高速光コンピュータネットワーク構築を行って来ている。地理的に離れたスーパーコンピュータの連携を行い,超大規模シミュレーション計算まで実行している例はなく,本所はその最初の重要な実験を行っていることになる。

 他にも,本学が医工学連携で振興調整費を認められたことに従い,川添が深く関わることになる。本センターは,このプロジェクトで,医療の高度化を実現するためにスーパーコンピュータを用いた第一原理シミュレーション計算による新材料設計でも積極的に関わって行く予定である。

 本学も平成16年度からは独立行政法人になる。その時までに,本センターもより良い体制を実現すべく,既に種々の検討を始めている。特に,本学には,情報シナジーセンター,流体科学研究所,及び本所にスーパーコンピュータが導入されている。各々,最大限に設置目的を達成すべく継続的に活動している訳であるが,今後のあり方を模索するため,これら3組織間での検討会を密に行っており,これから最適解を見出す努力を本センターと責任部門,さらには本所として行わなければならない。

 スーパーコンピュータは,今後とも重要な戦略物資である。それを活用した効率の良い新材料設計は,材料立国日本の存在基盤確立に欠かせないものである。今後とも,利用者の皆様には最高の環境を提供すべく努力してまいりますので,何とぞご理解,ご協力のほど,宜しくお願い申し上げます。

本センター責任部門制発足